決して、裕福な暮らしはしていない。
暮らしていける最低限の賃金から必死にやりくりして、趣味のお金をひねり出してる。 時には食費を、時には交遊費を削って、生活に彩りを与えようって躍起になっている。
PS VITA。 定価は勿論、安売りセールであっても僕の手には余る代物だった。 値下がりを待って、待って、それでも下がらなくて、だけど待ちきれなくて、僕は結局、正月早々、ゲームショップの行列に飛び込んでいった。 世の人々が、初日の出やら初詣やらで湧いている頃、破格の福袋を狙って、凍えるような早朝を堪え忍んでいたんだ。
そこから抽選という網を抜け、ようやく入手。 ・・・嬉しかった。 金額もさることながら、苦労して勝ち取ったって経緯が実感となり、僕の全身に悦びを注いだ。 誰に与えられるでもなく、何に祝われるでもなく、自分の為に、自分だけの為に手にしたPS VITA。 恐らく、プレゼントや貢ぎ物の類では、この感動は得られなかっただろう。 血と汗の結晶、苦渋を共にしたパートナー、いわば愛機。 PS VITAは、名実共に僕にとっての愛機となったのだ。
そして今日、新たなゲームが届いた。 中古以外では滅多にゲームを買わない僕が、予約してまで買った新品ソフト。 発売日当日である今日は、仕事中もずっと落ち着かなかった。 全力で仕事を片付け、早上がりを決行する。 再配達のラグを産む恐れがある自宅配送は避け、地元のコンビニ受け取りにする徹底っぷりが功を奏し、僅かなロスも無く配送品を手にした瞬間は本当に嬉しかった。
ドキドキがギッシリ詰まった配送品は存外に軽く、その癖、僕の腕に確かな圧力を与える。 やがて来る楽しさが、僕の四肢を伝い、心の奥をぎゅっと締め付ける。 あぁ、またゲームが出来るんだ。 新たなゲームが。 大好きなゲームが。 微笑まずにはいられない、感動の一瞬だ。
世の中は等価交換。 とは言え、失ったから必ず注がれるような甘い世界でもない。 それでも、失ったからこそ、満たされた時の感動が大きいのだと思う。 何の努力もせず、口を開けていたら飛び込んできたような悦びにウキャウキャしてる猿野郎には一生かかってもわからない。 自分の身を削り、目的を得る感覚、それこそが真。
そう、いつだって僕らは何かを犠牲にして、大きな成果を得るんだ。 救済と生贄、二律背反、刹那を生き抜く僕たちに、神は嗤い、云う。
―――さぁ、グランギニョルを始めよう。

SOUL SACRIFICE
PS Vitaを救済すべく、超越者は遂に降り立った。 犠牲を払えない軟弱者は去れ。 これより僕は、自らを供物として捧げるべく、修羅悪鬼の百鬼夜行へ馳せ参じる―――!(寝る間を惜しんでゲームするだけです)
