PUZZLE

 僕はたくさんの人々に支えられて生きている。 言わずもがな。

 

 でもそれは、僕を愛してくれている友や家族だけを指した言葉ではない。 僕を憎んだり嫌ったりしている敵もまた、僕を取り囲み、支えてくれている存在の一つだ。

 だってそうだろう。 彼ら・彼女らが負の側面を見せてくれるおかげで、大切な仲間たちの正の部分がハッキリと認識出来るのだから、感情的な好き嫌いはともかくとして、捨て置けない存在である事は確かなのだ。

 たとえ、過去の友が何かの拍子で敵に転化しても、彼ら・彼女らを失ったってことにはならない。 ピースは反転し、その色彩を変えただけで、その場に残り続けている。 何一つ無かったことにはならない。 砂浜を踏みしめた足跡は波に浚われても、踏み潰した砂の幾億はその事実を忘れない。 物理的にも、精神的にも、失われて見えるのはただのまやかしに過ぎない。 何一つ無かったことにはならないんだよ。

 

 そして僕もまた、盤面を埋める一枚のピースだ。 土台となる額縁ってほど壮大な存在では無く、眺めて嵌めるだけのプレイヤーでも無い。 周りのみんなと同じ、固定のサイズと、無限の形を携えた、一枚のピースだ。

 僕を必要とするパズルの盤面が、どれくらいの規模なのかは判らない。 数百ピースのお手軽制作かもしれないし、万単位の大作になるかもしれない。 果てしなさ故に、果ての無さ故に、地に俯き闇に絶望する夜もあるだろう。

 また、今はピッタリ嵌まる隣接したピースが現れないかもしれない。 別の形をした二枚のピースがその箇所を埋めるかもしれないし、僕の方が形を変えて、誰かに寄り添おうとするのかもしれないし、そもそもそっち側は額縁に寄り添う端面なのかもしれない。 希望に満ち、失望に落ちて、空を仰ぎ光に焦がれる朝もあるだろう。

 それでも、僕というピース無しには完成しないパズルがあって、僕はそのステージに立っているという事実。 どこかの盤面では全く必要の無いピースでも、この盤面では必要不可欠なワンピース。 自信を持たざるを得ない。 責任を負わざるを得ない。 それがこの世界の、正体だ。

 

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 僕はたくさんの人々に支えられて生きている。 言わずもがな。

 僕はたくさんの人々を支えながら生きている。 言わずもがな。

 誰もが誰かの手を繋ぎ、誰もが誰かの足を引っ張り、そうやっていびつな成形を整えている。 正も悪も光も影も、一緒くたにして一枚のパズルは出来上がる。 どんな形になるのかなあ。 どんな世界を築くのかなあ。 今はまだ見えないその全貌を、出来ないうちから嘆き悲しむなんてナンセンス。 もっと楽しまなくちゃ。 君の言う通り。

 さぁ、久しぶりの一歩を踏み出そう。 大丈夫、僕はきっとやれる。 周りのピースと、他ならぬ自分自身を信じれば、うん、きっと容易いことなんだよ。 さぁ、さぁ。 みんなが僕を、僕がみんなを、きっと待ってる。 さぁ、久しぶりの一歩を、さぁ。

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