コードネーム:ビチ子との新しい恋愛浪漫譚が幕と股を開いたってばよ!
――1次会、2次会に居酒屋、3次会にカラオケ・・・ アルコール後の個室という、ある種の定番コース。 僕たちは長年連れ添った友人のように盛り上がり、笑い合った。 これ以上ないってくらいの、至福の時間。 一見すると、ごくごく健全な愉悦だった。
「ねえねえ、次これ歌ってよ これ、凄い好きなんだ」
「・・・ごめん、わかんない・・・好きなんだったら、むしろ歌ってよ!」
「んー・・・まぁいっか じゃあ歌いまーす!」
――キッカケとなった曲は、驚くほど色気のないジャニーズ系の歌だった。 歌唱中もにこにこ笑い合って、何がスイッチになったのかは未だにわからない。 一つ言えることは、理屈を超えた狂気を与えるのに、酒と個室が十分すぎるケミストリーだってこと。
「・・・あー、歌った歌った! ・・・、ねえ」
「えっ? なになに、どうし・・・ンッ」
――唇は不意に触れ合った。 バカ騒ぎのベイビータイムは終わり、ここからアダルティーナイトが始まるのだと、お互いが直感していた。
「あーもう、こんなつもりじゃなかったのにな・・・ 自分から手を出すといつも失敗しちゃうから」
「でもそれって、その気じゃなかったのにその気になったってことだよね? 嬉しいな」
「ったく、もう・・・知らないよ?」
――どれほど長い時間抱き合っていただろう。 個室利用終了を告げる電話が鳴り響くまで、僕たちはお互いを貪り合っていた。
「終了の時間みたいだね、どうする?」
「あー・・・でも、明日仕事だし、オールはきついな・・・、・・・なんて」
「・・・うち、おいでよ」
――拒絶の言葉も意思も無く、そのまま二人は店を出た。 アルコールでふらつく身体を支えながら、別の地域に住む二人が、同じ電車に乗車する。 それが何を意味するか、説明はいらない。
「今日は来てくれてありがとう、・・・嬉しいよ」
「ンッ・・・ふぁっ・・・、あ、その、で、電気、は」
「消す必要ある?」
――蛍光灯がお互いの裸体を照らし、細かい動作や息遣いまでもが鮮明になる。 照明が切り替わらなくても、常時と情事のスイッチは、とっくに切り変わってた。
「あっ、ごめん、ゴム、・・・ゴム、を」
「・・・これでいいかな?」
――棚に手を伸ばし、馴れた手つきでコンドームを開封する。 遊び馴れてるとかじゃなくて、エチケットだから、って微笑んだ。 不特定多数と遊びまくろうと、一定の恋人と猿になっても、動作には必ず馴れが生じる。 そこに深い意味なんて無い。
――そのまま一つになって、僕らは何分繋がっていただろう。 狂おしい程の快感が全身を貫き続ける。 それでも唐突に終焉の時は来て、僕たちはまた二つに分かたれた。
「良かったよ・・・今日は本当に来てくれてありがとう」
「もう、一方的な感謝はやめてよ・・・ 招いてくれてありがとうだし、今後も何度だって会いたいって思ってんだからさ」
――気がつけば眠りに落ちていた。 アルコールと緊張に苛まされた身体は、とうに限界だった。
――翌日、夢かと飛び起きた隣には、寝息を立てるビチ子がいた。 よかった、夢オチじゃない。 僕の驚きに彼女も目を覚まし、その後はぽつりぽつりと、主に今後の話をした。 また会おうとか、次は遊園地がいいとか、そんな他愛のない話だ。
――そしてタイムリミットは訪れる。 出勤の時間、家を発つ時間、別れの時間。 だけど、お互いに神妙な空気はない。 すぐに訪れるであろう次回に向けて、既に心は昂ぶっていた。
――そう、次回。 更にその次そのまた次ってのを繰り返して、僕たちは成っていくのだろう。 僕史上初、告白より先に肉体関係を経る、所謂オトナの成り方で、実に久しぶりの恋人を得るんだ。
――言い損ねた言葉を、どこでどうやって伝えよう。 未来を想ってニヤつく僕を、通勤電車は運ぶ。 現実という名の社会に、只黙々と。 騒々しい毎日は、すぐ目の前に広がっていた――――
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という訳で幸せレポートをお伝えしました。 いつオチが来るんだどこでどんでん返しが来るんだとお待ち頂いていた皆様、申し訳ありませんがこれ以上の展開はありません。 上で描いた世界が全てです。 嘘偽りない完全ノンフィクションの世界を執筆させて頂きました。
やあいざまあみろ! セックスしたぞ僕は! 性病にも感染してないぞ! やあいやあい! 心も傾いたからゲイ疑惑も払拭だワイ! ここから僕の新しい世界が始まる! 歴史は確実に動いたぜッ!(^^)ノ
あ、一応誤解無いように言っておきますけど、
ですからね。 つまり、キスして来たのも家に誘い込んだのも棚からコンドーム出して来たのも全部ビチ子ってことですからね。 まさか誤解してないとは思うけど、念の為ね。 念の為。
あと、もう一個誤解無いように言っておきますけど、上で描いた世界が全てです、って僕の記載は文字通りだからね。 つまりその後一切連絡ないからね。 LINE送っても既読スルーだし、1ヶ月間何の接触もないからね。 つまり見ようによってはワンナイトラブされた側ってことだからね。
え? 文字色もヤリ捨ても普通逆だろうって? 知らねえよ普通なんて! こっちは付き合う気まんまんだったんだよ! こっちから手を出さなかったのも、草食というよりヤリ目だと思われたくないから1回目は平穏に終わろうと思ってたんだよ! 向こうがヤリ目だとわかってたらもっと色々やってたわ! 電気消してなんて言わず照明直射してマンぐってたわ!
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とまあそんな感じで日数空いちゃいましたけど、久々のセックスレポートでした。 とりあえず次に僕が誰かを好きになることがあるとして、間違いなくビッチだけは選ばないと思いました。 身体が目当ての女とかサイテー! やっぱりプラトニックな関係が一番だよね!(><)
