おくちくちゃい

 過去、突然悪友と部屋に上がりこんできた初見女子に指摘されて以来、匂いには超敏感な僕です。 自分の脇は香ばしくないか、足の匂いに酸味が混じっていないか、さっき脱糞したけど匂いが全身にまとわりついていないか・・・毎日そんなことばかり考えています。 考えすぎて、友達の家でデオドラントスプレーまき散らして怒られたりした事もあります。 青春ですね。(曲がってる)

 そんな僕が特に気にしているのは口臭です。 脇や足は、鼻を押し付ければなんとなくわかるけど、口臭って凄くわかりにくいじゃないですか。 自分の鼻に息を吹きかけたところで、特に肺レベルから発されているような匂い・・・アルコールやニンニクの匂いは判別しにくいし、直接鼻に吹きかける息が臭かったからと言って、周りの人に直接息を吹きかける機会が少ない以上、判別方法として正しいのかどうかも不明瞭。

 また、歯磨きやマウスウォッシュをしても、食べ物や飲み物に簡単に左右されてしまうのも困り種。 何かを食する度に歯を磨くわけにはいかないし、ガムやコーヒーなどで臭いを誤魔化すのも・・・何か違ってる気がする。 大体、よくガム食ったりコーヒー飲んでる母親の息が臭かったので、遺伝的なものも含めて、同じ轍を踏まないようにせねばなるまい。

 

 閑話休題。

 

 先日、仕事明けに友達とカラオケに行きました。 勿論、事前にシャワーを浴び、歯も磨いた上での参戦です。 仕事明け、という言い訳で自分の体臭を撒き散らす大人にはなりたくないものね。

 歌う前に、夜何も喰ってなかった僕は、松屋にて牛丼+冷奴+とろろを食しました。 匂いの弱いものを選び、口臭対策はバッチリ! 特にカラオケではマイクを使用しますから、僕の口臭が元で他のメンバー全員が中毒死・窒息死なんてのは避けたいところ。 警戒しすぎなんてことはないのです。

 

 そしていざカラオケ。 ちょっとお酒も入ったりして、テンションもそこそこ。 途中、マイク2本中1本が故障し、誰も交換しようと提案しない、というハプニングもありました。 1本しか使わないということは、僕の口臭がへばりついたマイクを全員が使うということですが、・・・まあ恐らく大丈夫でしょう。 事前から、警戒に警戒を重ねているのですから。

 中盤、徐々にエンジンがかかってきたのか、メンバー同士の体の触れ合いが多くなります。 一人の男は満面の笑みを浮かべながら一人の女に殴られ続け、一人の女は満面の笑みを浮かべながら格闘ゲームみたいな右ストレートとエフェクト音を鳴らし続けます。

 そんな格ゲー女子は、ぴょんぴょんはねながらこっち側に来たり、あっち側に行ったり。 えらく近づいてくるように感じるのは、酒のせいか、彼女特有の距離感のせいか。 何度か触れあったり機械を直接いじる時に彼女の胸が胸が胸が僕の手をこすったりその手で僕は僕のをこすったりまぁ色々ありましたけど、酒の席ってのは大概こんなものです。 ほぼ童貞のピュアガイたる僕は、あーいい匂いが香るぜー、なんて夢見心地で、彼女が動き回るたびにくんかくんかしてたものです。

 そう、いい匂い。 彼女のいい匂いを感じた時、僕は気づくべきでした。 彼女が何故近寄ってきたのか、胸を僕の手に擦りつけながら、これでもかってほど摩擦で火がつくほど擦りつけながら、何故僕の近くに来たのか。 もう一人の男は何故右ストレートを受ける度に射精しそうな顔をしていたのか。 後者はただのドMですが、僕は前者に対し、思考を巡らせるべきだったのです。

 終盤、彼女は何気なしにガムを二個取りだし、僕に言いました。

 

 「よかったら、どうぞ(笑)」

 

 

わかってます

 

ええ、わかってますとも

 

これがただの優しさじゃなく

 

僕の口臭対策と言うことくらい、わかってますとも

 

 

 もうね、貰った瞬間に全ての疑問が氷解したよね。 あ、近くに来たのは異臭確認のためか。 そういえば過去にも、ワキガっぽい女のワキガチェックに、直接身を乗り出してクンカしたって言ってたもんな。 序盤に来ず、中盤に来たのは、繰り返し使うことでマイクの異臭が表面化したから。 体に触れたのは、付着した細胞から体臭の原因を探るため。 あーもう全部繋がる。 よくよく考えたらこの女の子超酒強いし。 酔っ払ってボディタッチ増えるとかありえないし。

 しかし、あれほどセルフチェック&対策してても、まだ臭かった僕の匂い。 おそらく、デオドラントスプレーをかけるのはさすがに申し訳ないと思ったんでしょう。 だから、せめて口臭だけでも・・・って流れでのガム・・・クッ! 死にたい! 全身消毒用イソプロパノールで滅菌したい!

 そんな僕のネガティブを察したのか、臭い人に対する手段として、彼女は上々のヤリ手でした。 褒めざるを得ない。 僕が相手じゃなければ、勘付かれることも空気を壊すことも無く、対処できたことでしょう。

 だがしかしッッッッ! 僕は見ているッッッッ! 途中、正面から顔を見つめた時、目をそらすフリをして口臭から逃れようとしたあの動作をッッッッ! 照れたのかな、恥ずかしかったのかな、かわいーな、なんて思った僕の純情を返せッッッッ! そして臭くてごめんなさいでしたッッッッ!

 

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 そんな葛藤と涙をグッとこらえ、貰ったガムを口に含みます。 ふ、フフ・・・これで緩和されますよね、少なくとも皆さんの不快な気持は消えますよね・・・いい、いいんだ、臭いことを自覚出来れば、いくらでも対処が出来る。 僕が嫌いなのは、臭いことが分かっていながら対処しないボンクラ・・・ 今回は対処が甘かっただけのこと、次回以降はより完璧に、より鉄壁に、自己の匂いと向き合っていけばいい・・・

 あぁ、病院行くべきなのかな、加齢臭とも違いそうなこの匂い、病と断じて診断を受けるべきなのかな・・・フフ、ふ、フフフ・・・でもそれはさすがにやりすぎか・・・いくらなんでも確たる証拠もないのに、想定だけで病院はさすがに・・・フフ、でもこのガム美味いなあ・・・フフフ・・・クチャクチャ・・・

 

 「えっ、瀬駆さん、ガム一個ずつ食べるんですか? 二個同時に食わないで口臭カバーできると思ってるんですk

 

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 来週にでも暇を見つけて、病院に行こうと思います。

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