ミスターパーフェクト

HOME >  text >  ミスターパーフェクト

 

 僕は一人語りが多い。 一度話し始めると止まらない。 それは会話のキャッチボールなどではなく、一方的なピッチング練習であり、自分の物語の朗読会に過ぎない。 だから、それは止した方がいいと人に言われる。 僕も止した方がいいかな、と思う。 人に言われるくらいだから、きっと良くない事なのだろうから。

 僕は精神が幼い。 嫌なことがあれば露骨に機嫌を悪くするし、腹が立つことがあってもその場で言わず、Twitterなどの公共の場で遠回しに不満をブチ蒔ける。 誰かを傷つける為に、平気で周りを巻き込んだりもする。 だから、それは止した方がいいと人に言われる。 僕も止した方がいいかな、と思う。 人に言われるくらいだから、きっと良くない事なのだろうから。

 僕はオオカミ少年だ。 本気で言ったことを冗談と流され、冗談で言ったことを本気と詰られる。 自分の感覚でしかものを見ないから、会話の空気に乗れない為に、虚実が曖昧に感じるのだろう。 だから、それは止した方がいいと人に言われる。 僕も止した方がいいかな、と思う。 人に言われるくらいだから、それはきっと良くない事なのだろうから。

 

 もっと痩せた方がいい、もっと筋肉があった方がいい、もっと滑舌良い方がいい、もっとファッションに気をつけた方がいい、もっと人見知りしなければいい、もっと毛がふさふさならいい、もっと決断力があった方がいい、もっと器が広ければいい、もっとイケメンだったらいい、もっと面白かったらいい、もっと、もっと、もっともっともっともっともっと――― そりゃそうだ、悪いところを削れば良くなるに決まってる。

 

 でも、悪いところ、ってなんなんだろう?

 

 人には好みがある。 好みは言うまでも無く十人十色、百種百様、千差万別だ。 誰かが言うイケメンは誰かの言うブサメンで、誰かの言う人格者は誰かの言う破綻者になる。 絶対の指標なんて、ない。

 ただ、ある程度の平均を底上げしていけば、ある程度誰からも好かれて誰からも嫌われにくい平均的な超越者が出来るのだろう。 そんなものに価値なんてあるか、って言われたら、そりゃあある。 民主主義の世の中で、大多数に支持される魅力を持った人に、価値がないワケがない。 なれるならなりてぇよ、そんなもん。

 でも、そんな漠然とした理由では目指せない頂だよな。 誰からも好かれたいから過激ダイエットして性格改善セミナーに行って整形も増毛も血の滲むような努力も何だってする!なんて気持ちが保つのなら、世のほとんどの人はスーパースターだ。 頑張れないからなれないというより、そこまでしてなる意義が見当たらない。

 冒頭の欠点で言うと、僕自身はあまり困ってない。 自分語りはウザいだろうけど、何より喋ってて自分が気持ちいいからやっちゃうのだ。 改善すれば他人ウケは良くなるだろうけど、僕のストレスは増大する一方だろう。 気持ちいいことを止めるんだから当然だよね。

 同じように、好きで幼稚な事をやってる訳じゃない。 感情が制御出来ないからそうなっちゃうのであって、制御しようとすれば当然ストレスは増大する。 わざと虚実入り交じらせているというより、そういう喋り方が癖なのだから、癖を矯正すれば当然以下略。 だから周りさえ良ければ、今の自分を変えたくなどないのです。 よく知りもしない誰かの為に、自分改造なんて出来ようはずがないんだ。

 

 それでも改善したいと思うのは、自分の好きな人たちがそれを嫌がっているから。 その人達に嫌われるリスクが、好き放題したいメリットを上回ってるから、僕は変わりたいと思ってしまう。

 逆に言えば、世界中の人が僕の性格を嫌悪しても、僕の好きな一部の人が僕を好んでいるのなら、変わる必要性なんて何一つ感じないよね。 体型もそう。 僕の周りには細マッチョ好きが多いから目指してるだけで、僕的には今の体型でもワリと満足しているし、それ以上に食いたいものを食いたい量だけ食いたい欲がある。 そこを覆してるのは美意識ではなく、好きな人たちの存在なのだ。

 嫌われたくないからやっている。 やらされてる訳ではなく、やらなきゃって追い立てられている。 だから僕の好きな人たちが僕から離れていってしまったのなら、きっと即座に努力を止め、怠惰な通常運行に戻るのだろう。 嫌われたって別にいいんだ、好きな人に嫌われなければ。 僕は聖人君子じゃないんだぜ。

 それに、僕個人としては、感情を抑えられずに周りに迷惑ばかりかけるガキや、虚実織り交ぜようとして失敗してる不器用クンは嫌いじゃない。 誰にでも優しく、大人すぎて本当の感情が見えない人や、器用に自分の仮面を付け替えられる人のがむしろ嫌い。

 完璧であればあるほど、どうせコイツは他の奴からもチヤホヤされてんだろうな死ね、って思うし、イビツで誰からも好かれてなさそうな奴が垣間見せる原石のキラメキは、たまらなく愛おしい。 でも自分語りは僕も嫌だな、どんなに面白くてもそれは嫌だ。 キャッチボールは出来なくてもいいよ、全員が全員話題を振り合う奴らだったら会話が疲れて仕方ない。 一人か二人、周りの話を聞かずに暴走する奴がいた方がいい。 僕個人としてはそう。

 ただ、そんな汚れが好きだって人が、僕の好きな人にいないだけ。 だから僕はキレイになろうと努力しなきゃいけない。 自分の居場所を守る為には変わらなくちゃならない。 でも、全部は変わらないし、変われないし、変わる必要も無い。 大事なのは、着地点を見つけること。 だって、僕は僕だもの。 みんなに喜ばれても、自分が喜べない自分じゃ意味が無い。 要はバランスなんだよな。

 

 * * * * * *

 

 大事なのは周りの理想に沿うことじゃなくて、周りに嫌悪感を与えないよう、上手に自分を解放すること。 ダメなことはダメ、悪いことは悪い。 でも、それはオールレンジの罪じゃない。 ギリギリのグレーゾーンを掠めて飛べば、誰も身を乗り出して咎めたりはしないんだ。

 自分大好きでもいいじゃない。 空気読めなくてもいいじゃない。 感情的でも、理不尽でも、度を越えなければいいじゃない。 僕はそんな奴、嫌いじゃないよ。 他の誰が僕を嫌っても、僕だけは僕を嫌ったりはしない。 そんな僕で居続ける為に、今日も僕なりの努力を重ねよう。 大丈夫、僕が見てるから。 僕が頑張ってるところは、僕が見てるから。 頑張れ、僕。 負けるな、僕。 オナニー、僕。 ズバババアン!(ハイ台無し)