ストーカー・ロブスター 2

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 さて、そんなデンジャラスが自分の中学校に来るという情報を聞くも、あまりにも現実味がなさ過ぎて全く実感が湧かず、結局はただの笑い話として記憶の片隅に追いやってしまった僕。 まぁ、災害の話とか聞いても、ヤベーなwwww死ぬ死ぬwwwwとか思いつつ、実際に災いが訪れるその日までは悠々と日々を暮らしてしまうものですものね。 災害が訪れたら真っ先に死ぬタイプの瀬駆ですこんにちは。

 そのままあっという間に一年が過ぎ去り、中学三年生。 卒業を控え、高校受験やら周囲が慌ただしくなる中、勉強しなくてもテストで高得点が取れるタイプだった僕は、受験勉強を真剣にやる事も無く、生徒会活動や学校行事に没頭しておりました。 校内の知名度もピークに達し、校外での出来事が何故か学校中に筒抜けというタレント的立ち位置にいたザ・スターボーイの僕ちゃん。 具体的には、テキトーな歌詞にメロディーを乗せて歌いながら自転車漕いでたら、翌日「『向井さんは常に向かい風の中~』ってダジャレはどうかと思うよ」その場にいなかったはずの同級生に何故かダメ出しをされるぐらいのスターっぷりでした。 僕もどうかと思うのでこれは問題無いんですけどね。

 

「キャー! 瀬駆せんぱーい!」

 

 そんな僕に不釣り合いな声援が飛び交い始めたのも、丁度向かい風事件の頃からでした。 人気があったとはいえ、決して異性にモテるとかそういう類の人気ではなく、前回も言いましたがいわゆる珍獣、よく言えばマスコットキャラ的な扱いを受けていた僕。 女子の黄色い声援なんて全くの無縁でした。 物珍しいとは言え、女子にキャーワー言われて嬉しくないワケがありません。 だから初めのうちは凄くいい気分で聞いていたんですが、ほんの数日で一気に目が覚めました。

 

 「せんぱーい! こっち向いて下さいよぉー!」
 「キャー! 笑ったー! かーわいいー☆ 笑ってるよぉおおおおお」
 「あ、せんぱい! さようならー! キャハハー! 手ー振ってるー! キャハハハハーーー!」
 「ねーアレ瀬駆せんぱいじゃない? ぜったい瀬駆せんぱいだってー!瀬駆せんぱーい!せんぱぁぁーーーい!」
 「せんぱいだ!ホラ・・・ホラこっち見てるううううう! キャアーー! せんぱいがこっち見てるキャアアアアア!」

 

 えっと、何コレ。 いや女の子の声援だろって何か違う、決定的な何かが。

 何が違和感って、まずこの声、単独犯なんです。 今日は〇〇ちゃんで、昨日は××ちゃんだった、とかじゃなくて、ずっと同じ子。 ひたすら同じ子。 狂ったように同じ子。 その子の友達も近くにはいるんですが、クスクス笑って見てるだけ。 でもって、その頻度の高さ。 ほぼ毎日。 キャーキャーキャーキャー、ほぼ毎日。 馬鹿にした笑いとか、一切無し。 ちょ、止めてよ、バカにしてよ。 いっそバカにしてよ不安だから。 何これ、何これええええ!!

 ていうかさ、その子と話した事ないんだよ? しかもいつも遠くから叫んでくるから、顔もまともに確認出来ません。 当時女性不信の入り口に立っていた僕は目を合わせる事も出来ず、これは世間一般的に言う幸せなのか、それとも不幸せなのか、でも僕はちょっと辛いなー思ってるから不幸せだと思うけど、こんなこと人に相談したら自慢としか思われねーよなーってことは誰にも相談出来ねええええええひぎいいいいいって毎日葛藤してました。 モテは辛いぜ。(顔面蒼白で)

 これは世間的にも不幸せなんだなって確信出来たのは、冬の匂いがし始めたとある秋の日のこと。 その頃、学校では合唱コンクールってのがあって、まぁクラス対抗の歌合戦って感じなんですが、なんでもやりたがりだった僕は指揮者をやっていたんですね。 で、本番当日まで他の学級と合同練習をしたり、曲を披露してお互いにダメなところやいいところを指摘する会とかも実施されていたんです。

 僕なんてやる気の塊だったから、そりゃあ色々なクラスと合同練習しましたさ。 依頼出しまくりましたさ。 その中に、いつもの黄色い声援な女のクラスがあったんです。 正確には、あったようなんです。 というのも僕らが相手の教室に入った途端、イキナリ甲高い声で、

 

「アレ? わー! 瀬駆せんぱーい? キャーキャー! キャー! キャアアアアアアアア!

 

 あぁこの子だ間違いない(顔面蒼白で)。

 あのね、今までは友達と数人で帰る時とか、僕が一人の時とか、なんていうのかな、プライベートな時限定の口撃だったのよ。 でも、その時彼女が奇声を発していたのは、いわゆる団体行動時。 他の人も当然いるし、しかも遊びに来てるワケでもないのよ。 合唱コンクールは歴とした学校行事なのよ。 先生とかも同伴してるのよ。

 なのに、嗚呼。 今思い出しても寒気がする、あの空気。 いつも下校中に「モテモテだなー(w」とか言って茶化してきてた友達が引くほど無口になってるあたり、これは世間一般的なモテモテwwwwではないことがよくわかりました。 モテモテ(笑) ウハウハ(笑)

 その後はまぁ、ある意味予想通り。 僕らが合唱する時は背中に痛いほどの視線が刺さり、先方が合唱の時は指揮者を見ずに僕の方を見てばかりの彼女。 当然周囲も気付いていて、沈黙のリアクションが少しずつ、ざわ・・・ざわ・・・と変化していきます。 やめろ、僕の周囲で僕の噂をするな。 やめろ、事情が見えてないのは僕だ。 やめろ、とりあえずその視線をやめろ。 あざとい上目遣いをやめろ! 別に僕、お前の位置より高位置に立っちゃいねえんだよ!

 ただまぁ、悪いことばかりではございません。 その狂気染みた愛を感じられるほどの近距離になって初めて、ツラを凝視できるようになったんです。 目が合うのが怖いのと、女子が苦手なのとが相成って、今この練習中でさえまともにツラを拝んでいない僕。 しかしこの距離なら、向こうが友達と喋ってる瞬間など、チラッと見るだけでその全貌を拝むことが出来る。 さて、僕のラブビームで虜になった子猫ちゃんは、果たしてどんな素敵フェイスの美少女ちゃんなのカナ?なんて、絶望の中から少しでも多くの幸せを掴もうと、触れるべきでは無い闇の中に手を突っ込む僕。 可愛ければ、可愛ければまだ救いが・・・むしろバカップルになったってええんやで・・・! お願い、神様・・・、神様・・・!

 

 ・・・|д゚)チラッ

  

 あぁ

 

 

 あああぁぁ!!!

 

 

 ・・・

 

 て、なーんだ、全然アレじゃん。

 

 ( ´ー`)アレジャン...

 
   
 あぁ、期待させてごめんね? なんかね、別に何てこと無かったよ。 ホント、ちょっと大袈裟に前置きしすぎたかな、ってぐらいさ。 そう、何てこと無い、普通の薬物依存者だったよ。

 

 (´▽`*) (´▽`*) (´д` ) (´д`;) (´д:;.:... (:;.:…

 
 神様ェ・・・

 

 ジャンキーだよ! 細すぎだよ! クマ出すぎだよ! なのに白すぎだよ! 素人目にも化粧がよくわかるよ! なのにクマがハッキリ出てるってどういうことだよ! 学校側止めろよ! 学校って言うか、警察! ここに公然と薬物ヤッてる中学生がいンぞ! そこらの凶悪犯以上に指名手配書に映えるジャンキーが此処にいんぞって! もう! もう! モウ!

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オワタ\(^o^)/

 いや、その子は決して不細工ではなかった。 だけど、取り巻くオーラが完全に負だったんだ。 キャー! とか、今まで黄色い声援があったじゃない? それが風貌的に似合わなさ過ぎて、普通に引いちゃったんだ。 そもそも同じ中学生というか、悪い意味で高校生的というか、えげつない意味で年上にしか見えなかったんだ。 これ、どう考えても小学校の担任が言ってた女だよね? ごめん、これは言っちゃうわ、先生でも不細工とか言っちゃうわ。 素材が悪いとかじゃなくて、化粧コーティングとか負のオーラとか、後天的なものが渦巻きすぎ。 渦巻きすぎだってばよ!(どういうことだってばよ)

 僕の中で生理的に受け付けない人ランキング、当時の第一位に颯爽とランクインした彼女。 教室に入った時の声援で周りが冷やかさなかった理由がその時ハッキリわかりました。 空気読めてないから、とかじゃない。 リアル貞子に愛される男とか、さすがに笑えないよね。 同情の眼差しすら感じるんだけど、そういうの、ホントいらないから。 僕はまだ、人として生きていたいだけだから。(それすら不自由になる予感を払拭しながら)

 

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 練習が終わった後も、帰宅時などに執拗な声援を受け続けたのですが、以前はうっすらとリアクションしていた僕もさすがに無視or険悪な反応をしてしまうようになり、 気がつけば彼女も空気をーさっしーたのかー、アプローチもー、すっかりー、無くなってしまったのー、でしー、たぁー!\(^o^)/ とか! 言って\(^o^)/ みてぇ\(^o^)/ なぁ!\(^o^)/(アプローチは続く)

 結局、僕が卒業するまで彼女の声援が止む事は無く、日々追い詰められながらも、直接の接触が無かったことも幸いし、何とか彼女から落ち延びる事が出来たのでした。 あぁ、これで僕も高校生! 奇妙な中学時代とはオサラバして、新しい学生生活をエンジョイするんだ! 最初に付き合う子は明るい子が良いなあ!なんつってなんつってー!ヽ(´∀`)ノ

 

 ヽ(´∀`)ノ

 

 ヽ(´∀`)ノ

 

 ヽ(´∀`)ノ

 

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 まぁ、本命の高校は落ちたんですけどね。(心労! 心労です!)